オークニー諸島 8,000年前に想いをはせる 1.

オークニー諸島は、スコットランドの北東部にある約70の島々からなります。人口22000人程度、17の島に人々が住んでいます。

名前の由来は諸説ありますが、オルカOrca、シャチからとも云われています。行政府所在地はメインランド島のカークウォールにあり、町の中心には1137年に建設された聖マグヌス大聖堂が荘厳な佇まいで鎮座しています。

なんといっても、新石器時代遺跡の中心地をして名をはせています。ちなみに世界的に新石器時代は使われていますが、日本の歴史では縄文時代です。

↑↑↑日本語字幕もあるのでご覧ください

スコッツのホストファザーに「オークニーへ行きたい」と話したら
「あそこはスコットランドじゃないよ」と言われて「???」となったことがあります。
どのガイドブックを見てもオークニー諸島はスコットランドのくくりになっているので、それ以上調べたことがなかったのです。

調べた結果はこちら

オーカディアンOrcadianとしての誇り「海こそがわが友人、此処こそがわが住まい」

8世紀後半から、この地はノルウェー人の流入が盛んとなり、ヴァイキングはスコットランド本土への侵攻の拠点としました。

この流れを受け、875年にノルウェー王はオークニーとシェットランドを王国に併合しました。その後約600年にわたり、ノルウェーの支配下に置かれることになります。1472年、ノルウェー王の娘とスコットランド王ジェームス3世との婚約に際して、オークニー諸島はシェットランドとともにスコットランドに併合されることとなり、現在に至ります。

ということで、オークニーに行くとあちこちでこの国旗を目にします。

スコッツ同様、オーカディアンの誇りを持っているのがわかりますね。日本人には感じにくいアイデンティティへの誇りを羨ましく思ったりします。なぜなら、私はスコットランドに住んで初めて日本人としてのアイデンティティを考えたからです。海外旅行だけでは想いに至りませんでした。

地図で見ると本当に小さな島の集まりですが、ここオークニー諸島には8000年以上前に人類が暮らしていた形跡があります。この頃はまだ流浪の民族がいただけですが、ときを経て人々は定住を始めます。そして集落を形成しました。その遺跡の1つがスカラ・ブレイです。

古代の住居跡「スカラ・ブレイ Skara Brae」

  

今から5000年程度前、紀元前3100年から2500年頃の人々の暮らしの様子がわかる遺跡です。平らな石板を積み上げて造られた壁や暖炉、食器棚、寝台などの調度品もほぼ完全な形で残っており、今でも使えそうな印象です。住居同士を結ぶトンネルや排水施設、トイレなどもみられ、建築技術水準の高さに驚かされます。

この地は1850年までは土に埋もれたままでしたが、その年の冬の大嵐で屋根にあたる部分が吹き飛ばされ、いくつかの建築物が発見されました。まさに5000年もの眠りから目覚めた瞬間です。風雨にさらされることがなかったため、良好な状態で保存されていたわけです。

生活していた当時は当然屋根があったわけで、彼らはもともとあった貝塚の中に住居を構えました。貝の層は、脆くもありますが断熱効果は高く、厳しい北方の生活を乗り切るために好都合でした。

紀元前2500年頃には、人々はこの住居群を捨てて他の地へ移動したようです。気候変動でより寒冷になったためと云われていますが、そのはっきりとした理由はわかっていません。

遺跡の向こう側にある砂浜に降りて貝殻を拾ってみました。貝殻と遺跡をみて思うのは、人はそことつながっていて、心の一部が日常を隔てた別世界にいるとです。旅をする理由はそこにあるのかもしれません。

世界最古の円形墳墓「メイズハウ Maeshowe」

牧草地に小さな丘のように見えるのが「メイズハウ」、高さ7m直径35mほどの円形の墳墓です。紀元前2700年頃に建てられ、エジプトのピラミッドよりも歴史が古いと云われています。

アイルランドなどでもみられる羨道墳で、天井がないドーム状の内部にある1m四方ほどの低くて狭い1本の通路・羨道を通って中に入る構造です。内部はスカラ・ブレイ同様、平らな石が積み重ねられ、中央スペースのほかに、いくつかの小部屋もあります。

冬至を挟んだ数週間は、夕日の光が羨道から差し込み内部を照らすように設計されており、これで暦を把握していたとも云われています。その光は思いのほか強く暖かく輝きがあり、何とも言えない神聖な気持ちにさせられます。

中にあった装飾品などは、ヴァイキングによって盗掘されました。彼らは天井に穴をあけ侵入し、墓内の壁に古代北欧風文字であるルーン文字で落書きをしました。壁一面にびっしりと刻まれた文字列やドラゴンのイラストは圧巻で、大変感慨深いものがあります。

自然と融合して生活していた人間の知とパワーを肌で感じ、私達が忘れてしまったものの大切さに打ちのめされます。

オークニー諸島の魅力は、まだまだ入口にたったところです。

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